ジャック・ケルアック/路上

路上
 ケルアックの代表作。
 旅に出たくなる。最高の喜びと最高の虚しさがいつも同居している感じ。サル・パラダイスとディーン・モリアーティは常に「生きている」人達だ。
 バーで聴くあまりにも熱い狂ったようなジャズの描写は圧巻だった。音楽を読んでここまで興奮させられるとは思わなかった。まるで自分がその場にいるかのような感覚になる。ライブ会場でのあのゾクゾク感を本で味わう事ができる。
 第3部のサルとディーンの心の通い合いを読んでると胸が熱くなる。イタリアに行こうと決めるシーンはとてもいい。「神聖な間抜け」のディーン・モリアーティは時々とんでもなく美しい言葉を使う。「素晴らしい友達ヴィクトールの息子であるこのメキシコの赤ん坊の、眼をようく見てくれ。そしてこの赤ん坊が、眼という窓によって示される彼特有の魂をもった大人になるんだということを考えてみろよ。こんな美しい眼は、確かに最も美しい魂を予言し、示すものなんだ。」
 旅の終わりはいつもどこか切ない。この本の終わりもどこか切ない。
 「誰もが、みすぼらしく年をとるということのほかに誰に何が起こるかわからないのだ。」