Joao Gilberto JAPAN TOUR 2006

 お昼に目覚めて、「やっぱり行かなければならない」と思い、当日券を予約。
 結果的にこの決断、間違って無かったです。
 世間的には「もう3度目の来日だし」って感が無くは無かったと思うけど、僕にとっては初めてなわけで、もう「奇跡を見に行くんだ」という意気込みで東京国際フォーラムへ向かいました。
 着いてみると会場が思いのほかでかくて、びっくり。ステージには神様の座るイスがポツンと置いてありました。何というシンプルさ。
 やっぱり神様は開演予定時間には会場にいませんでした。開演予定時間を30分ぐらい過ぎた辺りで、やっとホテルを出て、ライブが始まったのは1時間遅れの20時くらいからだったと思う。僕と同じように神様も遅刻します。(笑)
 ギターを持ってトボトボ歩いてきて、とても可愛くお辞儀をして、ゆっくりイスに座って、何の前触れも無くギターを弾き始める。ギターの一音で、ジョアンの発する最初の声で会場の空気は変わって、みんなはジョアン・ジルベルトの音楽に集中する。なんか凄い体験だったな〜。消え入りそうな声で歌ったり、曲間の独特の間だったり。音楽を聴いているというより、美術館で絵を見ているというような感覚だった。演奏が始まる度にスーッと惹き込まれて行ってしまう感じ。心を持っていかれる体験。会場の人達との一体感を感じるのではなくて、とても個人的な経験。とても貴重な体験だったな。
 30曲以上歌ってくれた中で、繰り返しの美学を感じる事が多かった。繰り返しながらも、表現は少しずつ変化している。持っていかれる感じってのは、ここら辺のこととも関係があるのかもしれない。
 僕は《Getz/Gilberto》しか持ってないような人間だから、曲名とか殆どわからなかったんだけど、Desafinadoからその次の曲への流れ(後にPica-pauという曲だと判明)は印象に残ってる。このPica-pauという曲、とてもステキでした。他の曲とちょっと趣が違うけど、みんなの顔を微笑ませてくれるようなとても可愛らしい曲で。
 ボサノバってやっぱり気持ちよくて時々、意識的に目を閉じた。そして一度、無意識に眠った。(笑)後にも先にもこんな贅沢な居眠りはないだろう。神様の前で眠るなんて。
 ジョアンはこれまでの来日で何度かフリーズ現象を起こしているみたいなんだけど、今回もなりかけた。曲が終わって、ピタッと動かなくなる。その間、観客はずっと拍手。きっと幸せを感じてるんだろうな、フリーズしてるときって。だからジョアン・ジルベルトのお辞儀はあんなにも奥床しさがあるんだと思う。あんなにされて嬉しいお辞儀もそう無いのではないか。
 こんな感じで、とても豊かなライブだった。DVDを買おうか、迷い中。