太宰 治/人間失格

人間失格
 見えすぎたり感じすぎたりしてしまうことは辛いのね。読みながらチクチク痛い。そう言われてみればそうだの連続。人間って生き物は何だかな〜、と他人事のように思ってしまう。
 太宰のカッコ良さはどれくらいなものだったのだろうか。当時ananがあったら、好きな男1位に選ばれていただろうか。普遍的なカッコ良さではない感じがするな。
 それにしてもこれを同時代で読んだ人達はとても貴重な体験を、興奮する体験をしたわけだ。この作品は何回かに分けられて雑誌に発表されたようだ。読者は人間失格を読んで「何だか今回、太宰ヤバそうだぞ。」と感じる。その予感は的中して太宰は自殺。この時点で最後までまだ読めていない。太宰の死後に残りが発表される。太宰が死んでから残りの部分が発表されるまでの時間ってとても不思議な、ある種の異様な興奮を伴った時間であったと思う。この時間を多くの人が共有した。そして残りが発表されると同時にみんなが貪る様に読む。こんな状況は滅多にあるものではない。僕なんかは想像しただけでも何だか興奮してしまう。
 いつか読み返す本。いつ読み返すだろうか。