野上 彌生子/海神丸

海神丸―付・「海神丸」後日物語
 急に本が読みたくなったから、読んだ。高校生のときに買わされた本だったと思う。
 かなり激しい内容。人間を食べたい欲望に駆られる程の空腹感とは。最早「空腹」なんて表現じゃ、甘っちょろいのかもしれないけど。
 印象に残っているのは、その欲望に負けて、実際一人を殺してしまったそのあとである。殺してしまったあと、食べようなんて気は全く起きない。ただただ恐くなる。幽霊が出てくるのではないか、死体が襲いかかってくるのではないかと怯える。「完全に唯物的な生活は出来ない」と授業で先生は言ったが、まさにその通りであると思う。
 実際にあった出来事を元にこの本は書かれている。「生」とはそんなに簡単に捨てることができないものだということを、この本を読んで感じる。