魔法

 ドアのところで外を見ていた二人の男の子がいた。
 「電車って20キロくらいで走ってるのかな」
 「僕も20キロだよ」
 「え〜違うよ、それは体重でしょ。スピードの話」
 「僕、電車より速いかな」
 「絶対速くないよ」
 「車よりも?」
 「車のほうが速いよ」
 「でも僕、赤ちゃんよりは絶対速いよ、だって赤ちゃんは走れないもん」。
 こんな会話をしていた二人がいきなり「夕日が綺麗だね〜」って言ったもんだから、何だか僕はとてもうれしい気分になって本を読むのをやめて窓の外をぼんやり眺めてしまった。