キュレーターズ・チョイス展

 美術館に行きたくなったので写真美術館へ。晴れた日に恵比寿を歩くのも好きだし。
 キュレーターズ・チョイス展。美術館のスタッフの皆さんがそれぞれ自由にテーマを決めて、収蔵品を選んで展示するという企画。見る人との間にパーソナルなつながりが生まれるとても面白い企画だと思った。それぞれの作品にスタッフの人のコメントがついていて、そのコメントからも人柄や視点が感じ取られて面白かった。
 石田哲郎さんのセレクトがとても印象に残っている。「かなりキテルオヤジ達」をセレクト。デュシャンピカソ坂口安吾寺山修司坂口安吾とかかなりキテた。底力みたいなものを強烈に感じさせる写真、というか目だった。でもやはり一番キテるのはデュシャンなのではないかと思う。
 他にも魅力的なセレクトが多かった。例えば小林克さんの戦後の東京でのヤミ市を写した写真を集めたもの。とても人間味があった。「生きる」と事へのパワーのようなものが溢れていた。その中に渋谷でのヤミ市を写したものがあった。60年でこんなにも変わるものかと驚いた。60年後、渋谷を撮ったらどうなっているか。その写真に人間は写っているか。
 ラリー・クラークの「タルサ」という作品集は、作品自体が持っている空気感が凄い。どこにもいけない感じがする。どうしようもないと感じる。1960年代〜70年代、ドラッグとセックスに溺れた若者たちの記録。ひつぎに入れられた胎児の姿を切り取った写真はあまりにも悲しい。
 楽しい写真展だった。アンリ・カルティエ=ブレッソンのアノ写真も見れたし、大満足。