常識

 帽子を深くかぶったばあさんが2匹の犬を連れて入ってきた。何だか古臭い服を着せられた白い犬と黒い犬。僕は電信振込みの用紙に必要事項を記入している。自分の名前を記入し終えたころ、足元でなんかザワザワしてる感じを察する。目線を下に向ける・・・。すると・・・。黒が白の上に乗っている。
 「犬たちよ、郵便局でやってはいけない事があるのだよ。そーゆーことする場所じゃないのだよ、ここは。」
 僕が心の中でいくらそう思っても、そんな思いは犬たちに通じるはずもなく。黒は白に乗り続ける。振り続ける。
 「ばあさんよ、あんたの飼い犬たちがしてることに気づいたらどうだい。黒と白はわりと思い切ったことやってるんだよ、今。」
 僕はばあさんにこう言ってやるべきだったのかもしれない。ばあさんたら、何にも気づいてないんだから。なんで気づかないの、本当に。
 とにかくばあさんは2匹の飼い犬をしつけるべきだ。郵便局でやってはいけないと。